クリルオイルは抗がん剤治療に伴う認知障害を軽減する
がんの治療に伴い、認知機能という脳のはたらきが低下することがあり、もの忘れしやすい、集中力が続かない、同時に複数のことができないなどの症状が起こりやすいことが知られています。これらの症状が薬物療法などによって起こる場合には、ケモブレインと呼ばれることもあり、がん患者の15〜80%が罹患し、脳の酸化ストレスが原因である可能性が高いことが分かっています。
そこで、記憶障害に対するクリルオイルの効果を調べるため、ラットに抗がん剤を投与し認知機能障害を生じさせ、クリルオイル(50mg/kgおよび100mg/kg)を抗がん剤投与の1週間前から試験期間中継続投与しました。その結果、クリルオイルによって、抗がん剤による記憶障害を有意に抑制しました。また、クリルオイルの両投与量ともに、腫瘍壊死因子(TNFa)レベルとアセチルコリンエステラーゼ活性が有意に低下し、抗がん剤によって誘発された脳の前頭皮質と海馬領域における酸化および炎症性障害も抑制されました。結論として、クリルオイルは、抗がん剤治療に伴う認知障害を軽減する可能性があると言えます。
「Krill Oil attenuates doxorubicin induced cognitive impairment by inhibiting oxidative stress markers in the brains of wistar rats」 Research Journal Pharmacy and Technology 2023; 16(2):652-658. Jalaiah M 1.2、Jaya Sharma 1、Pankaj Sharma 1
1、アペックス大学薬学部、インド
2、QIS薬科大学、インド