摂取時刻でDHAの効果が倍増する!?
平成25年にユネスコ無形文化遺産に登録された“和食”。今や世界中で認知され愛される日本国民が誇るべき食文化ですが、その和食と切っても切れないのが魚を食べる習慣や献立です。なんと1989年に、イギリスの脳栄養化学研究所の教授マイケル・クロフォード博士が発表した「日本人の子どもたちが欧米人の子どもと比較して知能指数が高いのは、日本人が昔から魚を多く食べてきた食習慣によると考えられる」という驚きの研究結果が話題となったことは皆さんご存知ですか。 つまり、肉よりも魚を多く好んで食べてきた私たち日本人の脳に多く含まれる成分DHA(ドコサヘキサエン酸)が、人間の脳の発達には非常に必要不可欠な存在で、脳神経細胞の情報伝達をスムーズにする作用があるとされたのです。かすかに黄色みを帯びた油状の物質で、不飽和脂肪酸のひとつであるこのDHAを摂ると「頭がよくなる」といった分かりやすいCM等でも、当時、日本中で一大ムーブメントになりました。一言で言えばDHA「必須栄養素(脂肪酸)」は、脂質いわゆる体内の油分を構成するための必要となる基礎で、人間の脳や目の網膜、心臓(心筋)、胎盤や精子、母乳に多く含まれています。そして、DHAと同じ必須脂肪酸の一種で、1960年代に「血液の性状を健康に保ち、特に血栓をできにくくし、高脂血症を予防する結果、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を予防する」という働きがあるということで広く知られるようになったEPA(エイコサペンタエン酸)。以来、世界中の医学者によって人EPAの体への働きが研究され続けてきました。
人間の体内では製造できないDHAとEPA
それほど大切な存在でありながら、残念なことに体内ではほとんど作ることができず、外部から食事を通じて摂取するしかないのがDHAとEPAの現実です。この不飽和脂肪酸の一種であるDHAとEPAは、主に魚の油に含まれている成分として知られています。脂質なので、和食ではお馴染みの、さんま、さば、いわしなどのいわゆる油の乗った青魚に特に豊富に含まれていて、どちらも血液をサラサラにする健康成分として有名です。さらに、DHAには、脳の機能を向上させる、抗うつ作用があるといわれていて、EPAには血栓を防ぐ作用の他に抗炎症作用(リウマチや腸炎予防)、免疫調節作用、脂質代謝改善作用などがあるとされています。さらにそのどちらにも、加齢に伴って低下する認知機能の一部である記憶力、注意力、判断力、空間認識力を維持する働きがあることが報告されています。現在は、和食文化の広がりとともにアメリカやヨーロッパ等はもちろん世界各国でDHAやEPAに対する注目がますます高まっていて、この10年間で、学術論文の数も2倍以上に増えているのです。さらにNature誌やScience誌など世界的に著名な媒体や雑誌、専門誌にもその効果が取り上げられ注目度は大きくなる一方です。
日本人の青魚摂取量の減少
しかし、逆に欧米化した日本人の食生活の変化から青魚の消費量が減少し、逆に増え続けているのが自覚症状もほとんどないまま体内で動脈硬化が静かに進行し、突然の心筋梗塞や脳梗塞を起こすことからサイレントキラーとも呼ばれる高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満の4つの生活習慣病です。そこで、悪玉コレステロールを減少、血栓を予防、血圧低下、血糖値低下、そして脂肪の燃焼促進といったうれしい働きを持つDHAとEPAの高い生活習慣病予防効果が日本人の健康促進に期待できます。実は朝食時の魚油の摂取のほうが、夕食時よりも、血中のDHAやEPA濃度を高める効果があることを立証する研究結果が発表されました。「何をどのくらい食べるか」というこれまでの考えに、「いつ食べるか」という“時間”の観点もライフスタイルに組み込んで、生活習慣病を賢く防いでみませんか?
参考:保険指導リソースガイド 魚のDHAやEPAは朝に摂ると良い「時間栄養学」が脂質代謝にも影響保険指導リソースガイド
参考:産総研 魚油による脂質代謝改善効果が摂取時刻によって異なることをマウスで発見産総研