オメガ3系リン脂質と肥満に伴うNAFLD:潜在的なメカニズムと治療への展望
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肥満や2型糖尿病に伴って有病率が増加しますが、承認された薬物療法はありません。n-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3)には、高脂血症や抗炎症作用があることが知られています。既存の臨床試験では、NAFLDの治療において、トリアシルグリセロールまたはエチルエステル結合のオメガ3の効果は様々であり、非アルコール性脂肪肝炎などの進行したステージには影響しないことが示唆されています。前臨床試験の結果から、オメガ3の補給に使用される脂質の種類が、代謝に対する影響の程度と性質を決定する可能性が示唆されています。海洋由来のリン脂質は、オメガ3の代替供給源です。本レビューの目的は,主に肥満に関連したNAFLDにおけるオメガ3系リン脂質の使用に関する利用可能なエビデンスを要約し,NAFLDの予防/治療における使用の観点を概説することです。2021年5月にPubMedの文献検索を行いました。合計で1088件の論文が確認されましが、選択基準に基づき、38件の原著論文がレビューに含まれました。また、オメガ3リン脂質の潜在的な作用機序を記述した論文も厳選して含まれています。前臨床試験では、オメガ3系リン脂質が肝臓において強い抗ステロイド作用を示すことが明らかになっており、これはトリアシルグリセロールとして投与されたオメガ3系に比べて、より強いものです。肝臓だけでなく、脂肪組織や腸も含めた複数のメカニズムが抗ステロイド作用に関与していると考えられます。肝臓におけるオメガ3系リン脂質の強力な抗ステロイド作用を示す前臨床試験の証拠は、臨床試験で確認されるべきです。進行したNAFLDに対するオメガ-3リン脂質の効果の可能性については、さらなる研究が必要です。
「Omega-3 phospholipids and obesity-associated NAFLD: Potential mechanisms and therapeutic perspectives」
Eur J Clin Invest. 2021 Jul 22
Marko Mitrovic 1、Gabriella Sistilli 1、Olga Horakova 1、Martin Rossmeisl 1
1.(チェコ科学アカデミー生理学研究所脂肪組織生物学研究室)